Nepenthes maxima x veitchii 'Australia' EP? いつの時代にも傑作

By b.myhoney - 6月 17, 2022

Nepenthes maximaとveitchiiは長い間広く楽しまれてきた種で、したがってそれら同士の交配種は必然的に多くの栽培家により作出されてきたものと思われます。わが家にあるのは、豪クイーンズランドにあるネペンテス交配のトップランナー、Exotica Plants (EP)が少なくとも20年以上前に作出したと思われる個体です。

↓過去記事
bijou nepenthes: N. maxima x veitchii (Australia) 良い個体を入手した 

最近、わが家のN. maxima x veitchiiが新しいピッチャーを付けました。

N. maxima x veitchii (aka x Tiveyi) 'Australia'
I presume this plant to be EP's clone.


N. maxima x veitchiiという交配は(正式ではないものの)便宜的にN. x Tiveyiと呼ばれることが多いのですが、オリジナルのN. x Tiveyi(英語圏ではティヴィアイなどと読む)は、ヴィクトリア朝時代の1897年に大英帝国で作出されたものです。

当時のネペンテス収集・栽培で世界に名を馳せたヴィーチ商会のG. Tivey氏が作出した本交配種は、当時の文献ではN. curtisii 'superba' x veitchiiと表記されています。種子親(♀)のN. curtisii 'superba'とは、現在ではN. maximaと同種視されるN. curtisiiの、より大型で襟が豪華な、濃色のフォームとされます。

この辺の経緯はこちらの記事にまとめてありますので、気になる方は是非。

bijou nepenthes: N. x Tiveyiとヴィーチ商会、Exotica Plants

前回のエントリ で、一正園由来のN. maxima x veitchii(Exotica PlantsのN. x Tiveyi 'Australia'と思われる)を紹介しました。 bijou nepenthes: N. maxima x veitchii (Australia) 良い個体を入手した それに先立って、このネーミングの本家である1800年代の交配種が生まれた背景について調べたのですが、記事が長くなりすぎるので分割することにしました。 本記事では、19世紀のヴィクトリア朝時代に

100年以上前の名交配へのオマージュとして、EPは少なくとも90年代にはN. maxima x veitchiiを作出していたらしいことが、過去のインターネットを遡ると伺えます。

一方で、この株を八丈島の老舗業者「一正園」から引き継いだヒーローズさん(Hiro's Pitcher Plants)いわく、「数十年前にオーストラリアの個体だと言われて入手したそうです」とのことで、入手先がEPの所在地と符合していることと、EP作出のクローンに類似していることから、本株はExotica Plants由来と考えてよいと個人的には思います。


前回のピッチャーは、このように深い赤色が渋い雰囲気を醸し出すエージングを見せてくれました。その後、冬を挟んでえらく時間がかかりましたが、なんとか環境に適応して今回のピッチャーを付けてくれたというわけです。


新旧ピッチャーの共演。古い方はやや退色しています。

こうして見ると、前のものは若干アッパーになりかけのような形でしたが、今回のはロアーに戻ったような印象です。入手した際には、「脇芽に袋が付くまでは暫くロアーは拝めないかな…」と思っていましたが、意外なほどすぐに見ることができて嬉しいです。

fine stripe and rippling on the peristome of this plant reminds me of N. veitchii (k) from EP

開きたての頃はこのように淡いピンク色をしています。この襟の繊細なストライプと波打ちかたは、同じくEPのN. veitchii (k)によく見る特徴なのです。EPは、(k)かそれと近い系統のN. veitchiiを交配に使ったんじゃないかと想像しています。まあ、真相はEPのみぞ知る、ですが。


蓋の下面にはN. maximaが持つ突起を受け継いでおり、N. maximaと同じくここから蜜を分泌します。こういう突起状の蜜腺のある種は、野生ではこのように虫などを誘引してトラップによる捕獲確率を上げているのでしょうね、よく出来ています。

N. maxima x veitchii (aka x Tiveyi) EP ?

現在はこのように赤みがだいぶ強まった見た目をしています。これはまた違った雰囲気を与えて美しいと思います。

これはN. maxima, veitchiiともに当てはまる場合が多いですが、本株もピッチャーの初期からエージングを経て形や色合いが変化していくのが特徴的です。そこで、今回のピッチャーの経時的な変化を一枚の画像にまとめたのがこちらです。できたばかりの頃とエージングが進んだ頃で、かなり印象が変わっていることがお分かり頂けるかと思います。


私はこの交配(N. maxima x veitchii)が好きでして、それはたった2種の、それも何も珍しいことはない原種どうしのシンプル極まりない交配なのに、このように美しく迫力のある姿を見せてくれるからです。もちろん私自身、幅が広くてストライプばりばりの襟に目がないということも要因としてはありますが。

この素晴らしい系統のN. maxima x veitchii 'オーストラリア' (一正園)は、ヒーローズさんが挿し木増殖してたまに販売しているので、私と同じ性的嗜好(笑)をお持ちの方は、是非とも入手して維持してみると良いかと思います。強健種同士の交配ですので、私のような未熟な栽培者でも安心して栽培できるのは嬉しいポイントです。

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