Nepenthes burbidgeae BE-3848 ‘Pig Hill’ 行く末を見守る

By b.myhoney - 6月 15, 2022

昨日、わが県を含む東海地方が梅雨入りをしたと気象庁が発表しました。なんでも、蓋を開けてみれば、平年より8日ほど遅い梅雨入りだったようで。 

私のような屋外露天の栽培者にとって梅雨そのものは、日照時間が減るけど湿度も上がるので、生長スピードは鈍るものの植物の調子自体は案外良かったりします。子株ばかりなので徒長の心配もないです。

ただ、用土が濡れたままの状態で気温が上がると蒸れの心配があるので、そこは気を付けたいところですね。今年はラニーニャ現象で暑い夏になる予想で、それが秋まで継続する可能性は40%(6月10日時点の予報)だそうです。高地性寄りの株たちには試練の季節の予感。 

N. burbidgeae BE-3848 (Borneo Exotics)

わが家で高地性寄りの株といえば、自生高度からはほぼハイランダーに分類されるであろうこの株は、昨年存外な耐暑性を見せてくれたのでした。

↓以前の記事。

bijou nepenthes: Nepenthes burbidgeae BE-3848 'Pig Hill' ひと夏を越えてみて

本品番は、ボルネオ島の最高峰キナバル山の中腹ほど(約2,000 m)に位置するPig Hillと呼ばれる超苦鉄質(ultramafic)地帯の、キナバル自然公園との境界ギリギリの場所で合法的に採取された種子由来だと提供元のBE(Borneo Exotics)は言います。

Pig HillエリアにはN. burbidgeaeの他に、同じく超苦鉄質ネペンのN. rajahも生息高度がオーバーラップする形で自生しており、それらの自然交雑種であるN. x alisaputranaが見られることでも知られます。他にはN. tentaculataなども見られるようです。


この冬に植え替えをして、それまでの2.5号鉢から4号鉢にサイズアップしました。本種は根が張ると言われ、4号鉢では少し小さいかもとも思いましたが、栽培スペースに限りがありますので拡張の目処が立つまでそのサイズで我慢してもらいます。悪しからず。

植え替えた後の根の修復や広くなった土壌に根を延ばすなど、地下部の充実を地上部の展開と同時並行で行っているはずですので、まだ絶好調というわけでは無さそうです。とは言えとても強健さを感じるクローンで、私のような低地性環境でも栽培者を選ばず育てられるような逞しさを感じます。逆に、寒すぎるのはそれほど好まない感もあります。 

BEの'Pig Hill産' N. burbidgeae雑感

Pig Hill産としてBEから流通するN. burbidgeaeには、フラスコ苗のBE-3873というのがあり、また2019年までに売り切ってしまい今ではカタログ落ちした数量限定の実生個体群、BE-3834というものもありました。これらは同じグレックス(つまり共通の両親)ということで、株ごとに個体差がありながらも比較的似たような特徴を示します。

このBE-3848は独特な赤みの強さで選別された単一クローンとのことで、品番の近さから見て、BE-3834やBE-3873と兄弟株であると思われます。確かに色は普通のN. burbidgeaeよりも派手で、今のところ赤というより紫といったほうが近い感じの色味です。

最新のピッチャー。この袋はストライプが少なめ

BEが言うには、ひょっとしたら過去のある時点でN. rajahの遺伝子混入の可能性も…なんて、さりげなくN. x alisaputranaの雰囲気を匂わせていますが(笑)、もしこの株を見て交雑していると思う原種をどれか一つ答えよと言われれば僕は真っ先にN. stenophyllaを挙げるでしょう。

まだまだ幼苗なので断定するのは尚早かもしれませんが、色味、縦長の斑点模様、ピッチャーやフタの形状など、様々な観点からN. stenophyllaのような種との交雑を考えるほうがどう見ても自然だと思います。

BEには昔、同じPig Hill産のBE-3041, BE-3042(それぞれフラスコ苗、実生)という品番のN. burbidgeaeがありました。それらの古い系統と今回の比較的新しめの品番たちは同じ系統なのでしょうか?3041や3042は古い品番ですので、今となってはBE公式の写真でしか見る機会がなく真相は分かりませんが、昔のBEのN. burbidgeaeは丸いピッチャーを付けたと旧くからの栽培家は口を揃えます。

私個人としては、わざわざ新しい品番を新設して実生とフラスコ苗(※BEはフラスコ苗を導入する前に実生個体を売ることが多い)をリリースしているのが不思議で、これは新たに別の系統の種子で新たに作り直したからなのではと推測しています。BEはかつて、規模の大きな電気火災でラボの多くの培養クローンを失ったと自ら公表しており、古い品番はその火事の犠牲になったのかもしれませんし、フラスコ内で淘汰が進んだ等で作り直したのかもしれません。

こういうウエストのある袋も付ける

BEは植物の由来だったり分類学的な同定がやや雑なときがあるという個人的な印象もあって、耐暑性の高さやstenophylla交雑の気配などを総合的に勘案すると、本当にPig Hill由来かしら?と思わなくもない、こともないこともないですが、それも踏まえてこの株の将来を楽しみにしています。

と言うのも、単一クローンのBE-3848は、以前BE-3997 N. burbidgeae x (chaniana x veitchii)という交配の母株として使われており、ここからこの株は貴重な雌であることがわかります。赤紫色が強いカラフルなボディと襟は、交配親として面白いポテンシャルを持っていると思います。多くのN. burbidgeaeがそうであるように、株が充実して大きくなればピッチャーも幾分丸くなってくることでしょう。

この赤みの強い選別クローンを含むBEのN. burbidgeaeって、何故か大株まで育てている人をほとんど見かけず、成熟すると一体どのようなピッチャーを付けるようになるのかよく分かりません。最近はヤフオクなどで安価で売られているのもあって、あまり見向きもされない感のある不遇な個体ですが、是非とも大きく育てて※1 ※2その姿の変化を見てみたいと思っています。

※1: 「スペースが無いのでひとまず狭い4号鉢に押し込んでいる」と上で書いたのと矛盾しているじゃないか!という指摘は一切受け付けません。

※2: 一方で、大きな温室付きの土地はいつでも募集中です!

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