Nepenthes veitchii BE-3734 'Bario Highland' (Plant 2) 新しいピッチャーが完成

By b.myhoney - 9月 30, 2021

Nepenthes veitchiiはボルネオ島固有種で、島の北半分、中でもSabah(サバ州)、Sarawak(サラワク州)、そしてCentral Kalimantan(中央カリマンタン州)に渡り、広くパッチ状に分布しています。

この幅広い分布が意味するところは、本種の環境適応能力の高さと強さ、そしてバラエティの豊富さということになると思います。

実際、高度分布も0 - 1,600 mと幅広く[1]、温度など様々な環境パラメータに対して比較的寛容であるということを示唆しています。

Borneo Exoticsの定番N. veitchii Bario

園芸的には低地性から高地性(便宜上、低地性と区別するためにHighland、高地性と呼ばれますが実際には中間地性というのが実態です)まで様々なフォームが流通していますが、中でも特に広く人気を獲得しているのがピッチャーが丸くなることで知られるバリオ(Bario)フォームだと思われます。

以前の記事はこちら

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii BE-3734 'Bario Highland' (Plant 2) 

スリランカのBorneo ExoticsがこれまでリリースしてきたバリオのN. veitchiiにはいくつかありますが、多数のクローンが混在するBE-3734はストライプ襟個体もしばしば見られ、かつ比較的手に入りやすく人気のあるリリースです。

ちなみに余談ですが、BEやMTは'Bareo'とも表記するのですよね。「Kelabit Bareo」などといくらググってもそのような地域見当たらないので、恐らくは表記の揺れのようなもので同じ地域を指しているのだと思います。Bario, also known as BareoとかBario (or Bareo)という表記も見られますし。

以前の記事で、我が家に2つあるBE-3734のうちストライプの方に膨らんでいた蕾が、ピッチャーとして完成しました。と言っても実は結構前の話になるのですが。

N. veitchii BE-3734 'Bario Highland' (Plant 2) from Borneo Exotics

控えめに入るリボンのようなストライプにBE個体らしさを感じます。

N. veitchiiの襟の展開の様子

この株の襟は時間の経過とともに徐々に巻いていきます。また、色も最初はクリーム色ですが、時間の経過とともに徐々に黄色っぽくなってストライプも濃くなり、キエリウツボの和名の所以を見て取ることができます。

今回、この襟の発展の様子を連続写真にしてみました。

Development of N. veitchii's peristome. The peristome starts to roll back after the pitcher had opened and its color changes from milky white into yellow as time passes.

BEのバリオは襟が完全に巻く個体が多いような気がしますが、今回のピッチャーは幾分開いたまま完成しました。鉢が干渉している影響かな?

開いた後も丸みを帯びるピッチャー

上の写真でもある程度わかるのですが、N. veitchii 'Bario'は蓋の展開後もピッチャーが丸みを帯びていきます。それがよく分かるようにしたのが下の画像です。

Newly opened pitcher is getting tubby in a several days. This change in shape seems to 'pull' the peristome and force it to roll back.

蓋が開いた直後はいくぶん平坦な襟をしていますが、数日してピッチャーのボディが丸みを帯びてくると、この構造変化による力学で襟が引っ張られる形で反り返るとともに、蓋が上を向いてきます。ちょうど猫背だった人が胸を張るようなイメージです。

ここの産地のN. veitchii特有の人を魅了してやまない形状と豪華な襟が、このような仕組みで形成されるのは自然の神秘という感じで面白いですよね。

these days...

最近の様子がこちら。ピッチャーボディにはいつの間にか斑点が現れ、襟の黄色がより熟成してゴールドという感じに変化してきました。
peristome color turned into 'gold'

この色合いもシブさがあって美しいと思います。

新しくピッチャーを付ける度に形状が変化していき、さらにそのピッチャーの表情自体もどんどん変化していくので見ていて飽きない品種です。

参考文献
[1] Clarke, C.M. 2018. Nepenthes veitchii Hook.f.. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-1.RLTS.T39709A143965852.en

[追記]その後の生長記録はこちらの次の記事をぜひ。

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii BE-3734 'Bario Highland' (Plant 2) 様々な顔を見せるピッチャー

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