Nepenthes maxima wavy leaf (Sulawesi)
8月は梅雨が舞い戻ってきたような長雨に見舞われましたが、後半になって晴れ間が続くようになりました。
しかし気付けば涼し気な風が秋を告げる季節となってきました。1年はあっという間に過ぎていきます。
N. maxima wavy leaf Rindingalo, North Toraja, Sulawesi IS |
「最大の」という種小名を持つ本種ですが、9 cmのテラコッタ鉢からようやく先端が飛び出したばかりで、まだまだ巨大化する気配は微塵も見せない幼苗です。
トラジャといえば…コーヒー豆!?
ラベルによると「N. maxima wavy leaf Rindingalo, North Toraja, Sulawesi IS」とのこと。インドネシア・スラウェシ島の南部に位置するNorth Toraja Regency(北トラジャ県)、その中のRindingaloという地域に由来する個体と思われます。
スラウェシ島のNorth Toraja Regencyと、その中にあるRindingaloの位置関係 (via Google Map) |
Rindingaloという地域をGoogle Earthで調べると、大まかには北部に2,000 m以上の山間部があり、南に行くほど標高が低くなる(1,000 m付近)地形のよう。
ところで、トラジャってなんだか聞き覚えがある名前です。
トラジャと言えばコーヒー豆の産地としても聞く名前ですが、確かに地図上でRindingaloから南東に少し行くとcoffeeの名がちらほら見える市場?が。
Rindingaloから少し離れるとコーヒーの市場?が |
余談ですが、トラジャコーヒーはかつてオランダ領だった時代に栄えた幻の品種とされ、アラビカ種の最高峰とされる独特で上品な風味で珍重されたよう。
大戦の混乱で衰退したもののその復活には日本人が深く関わったとか。なんでも交通網などインフラ整備から手を入れるなど尽力したそう。雑学。ネペンテス趣味は勉強になる。
自生地がアラビカ種のコーヒー豆の産地と被っているとなると、アラビカ種は高すぎない気温(18-22℃)と昼夜の温度差を求めるので、高地性に近いイメージでしょうか。
すると日本の夏に無冷房屋外栽培は過酷な気もしますが、今のところ枯らすことなく育てられています。
N. maxima自体、典型的な垂直分布が600 m ~ 2,500 mとRindingalo全域を飲み込むほど超広いので、この個体がどの辺から来てどういう環境を好みそうか絞り込む手掛かりにはなりません。
一方で、ここまで育ててみた感触としてかなり耐暑性がありそうで、わが家ではホムセンネペンに次ぐスピード感で次々と葉を展開しています。もっとも、N. maximaの強健さに甘えているだけとも言えますが…。
なので僕の認識としては低地性としての管理も可能な中間地性ぐらいの認識です。きちんと冷やせばもっと大きくなっているのかもしれません。
wavy leaf(ウェイビー・リーフ)フォームのN. maxima
N. maxima(ネペンテス・マキシマ)には葉がひらひらと波打つフォームがあります(というかそちらの方が一般的?というほどよく見る)。
wavy leafのピッチャーは色彩豊かでストライプ襟のような個体から、グリーン単色のものまで幅広いバラエティが見られるようです。
こちらのフォーラムの2013年の投稿
Sulawesi 2013: Part 1 | Carnivorous Plants in the tropics
にはスラウェシ島、トラジャの近くを訪問したネペンテスツアーの様子が沢山の写真とともに紹介されていますが、美しいN. glabrataなどと共に、実に幅広い見た目のN. maximaが確認できます。
投稿者によればこの島で見たほとんど全てのN. maximaがwavy leafで、「普通の」葉を持った個体を探す方が難しかったとか。この個体も上記に近い地域の由来であるため、将来どのような形質のウェイビーな葉やピッチャーを見せるのか楽しみです。
very low humidity of my growing space forced the plants to produce small and thick leaves (taken in June) |
恐らく湿度が保たれていたであろう温室で育っていたのにわが家の過酷環境に連れてこられたこと、そして導入後に砂利系メディアに植え替えられたことで、葉からの蒸散が激しいのに根からの給水がおぼつかないという二重苦状態に置かれることになった本苗。
しかし、そのような環境変化に対して、蒸散を抑えるべく小さくて厚みのある葉を出しながら生長を続けてきたこの個体からはN. maximaらしい強靭さ?を感じます。上の写真は6月頃のもの。ピッチャーもいかにも幼苗といった感じ。
ところが最近になって、ピッチャーの形質が少しだけ変化し、葉も少し波打つようになってきました。根が充実するなど株として少しながら成熟したということだと思っています。
the latest leaf seems to be 'wavy' as the plant grew slightly |
以前よりも蓋が立派になり、襟の厚みも少し目立つようになりました。とはいえ、まだマキシマっぽさはかけらも見えませんが、大きくなるとどのようなピッチャーを付けるのか将来が楽しみです。
[参考文献]
Clarke, C.M. 2018: Nepenthes maxima (errata version published in 2019). The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T39675A143962061.
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