Nepenthes veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 2)

By b.myhoney - 9月 15, 2021

以前も記事にしたこのN. veitchii H/L Murud。

この品種は山田食虫植物農園にて無菌播種され頻繁に販売されるN. veitchii(ネペンテス・ヴィーチィ、より正確にはネペンテス・ヴィーチアイ)です。

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 1) 

前回タイトルがPlant 1となっていることから察せられるかもしれませんが、わが家にはこの品種が2株あります。

何故2つも導入したのかには深い意味はないのですが、本種の個体差が気になったのでした。

山田さんの農園で本種を注文する際、GXXX-32, YXXX-33など(XXXは数字)各個体に割り振られている管理用の番号があるのですが、販売ページを眺めていると末尾が-32と-33で違う傾向がありそうな気がしました。

なんとなくですが、赤みの発色が強い個体は-33に多い気がしたのと、-33に特徴的なピッチャー形状の個体が多そうだという(あくまでも)主観に基づき、-32と-33を1個体ずつ注文したのでした。

(あくまでも気がしただけで、ましてや小さな株で写真のみの判断なのでなんの根拠もないですが。)

Plant 1が-32の個体、そして今回のPlant 2が-33です。

ちなみに-32の個体は私が購入してしばらくすると販売リストに現れなくなりました。ちょうど番号の移行期だったんでしょうかね?

 

G. Murud産のN. veitchiiはEP由来だった!

Murudというのは、マレーシアのサラワク州で最も標高の高いGunung Murud(ムルド山、標高2,424 m)のことで、有名どころではN. lowii(ネペンテス・ローウィ、ローウィアイ)の産地として名前が聞かれる山です。

他にもN. tentaculataとN. reinwardtianaの自然交配種ではとの議論があるN. murudensisや、N. stenophylla、N. chanianaなども自生しているようです。

G. Murud由来のveitchiiといえば、オーストラリアのナーセリーExotica Plantsが昔リリースしたシリーズがまず思いつくので「ひょっとしてEP由来なのでは?」と思い山田さんの質問箱で聞いてみたところビンゴ。

 

大昔にオーストラリアのEPから沢山輸入しました、
色々な個体がありその時に雄と雌があったのでシブクロスも行って実生も作っています、襟にストライプが入る個体と無地の個体もあります、現在GMurudにveitchiiは発見できないようです、EPがどうやってMurud由来のveitchiiを導入されたのかは判りませんというか、、、聞いたことが無いのでwww
挿し木苗を販売するときはEP、実生を販売するときはY'sで販売しています 



 

(a)と(d)両方入れてます
aが襟がゴールデン
dがストライプ

でもこれって後付けの記号で販売当初は色んな個体が沢山ありました、買ったときは記号は無かったんです。

色々と貴重な情報が得られた。みんなも山田さんにどんどん質問しよう!笑

山田さんのリプにもある通り、EPのN. veitchii (a)はG. Murud由来のGolden peristomeの個体群で, (d)はG. Murud由来のStriped peristome, long neckです。

当時はそのような記号はなかったということですが、今でいうEP (a)とEP (d)に相当する個体を沢山仕入れたということなので、山田さんが販売する品種はその中の選別個体同士のシブクロスやその子孫、と考えて良いと思います。

Murud産由来のEP (a)や(c), (d)などは現存個体が恐らく少なくて、有名なMarcello Catalano氏のデータベースを見てもEP (d)の代表的な写真が1つだけ見られるのみで、写真を探すのも難しいです。

ただ、EP由来と思われるN. veitchii G. Murudは、山田さんの他にも例えばドイツのChristian Kleinが交配に使用していて、これらの実生の形質から推察するにG. Murudのveitchiiには概ね以下のような点が特徴として現れやすいと思っています。

  • ピッチャーは縦に細長めの形状
  • 襟はあまり巻かずに主張し、放射状に広がることがしばしば
  • 黄と濃赤の高コントラストなストライプが出ることがある
  • ボディは茶色~赤っぽいものが多い

特に、低地性veitchiiでもないのに明らかに細長いピッチャー形状や、他の産地より赤色が濃いなどMurud産の個体群は独特で、他種の血を過去に取り込んだ等この山独自の進化を果たした可能性はあります。

ちなみに山田さんもちらっと述べていますが現在G. MurudにN. veitchiiは発見できないらしい(EPが過去に入手したのみ?)なので、日本では安価で流通してますがこの系統のN. veitchiiは案外貴重なのでは?と思っています。

 

わが家の個体(Plant 2)

わが家のムルド山産veitchiiの、少し前に撮影した写真です。

N. veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 2)

-33の番号の個体ですが、やはりPlant 1に比べて赤みが顕著な気がしています。なんというか、同じ光量でも発色が違うのです。番号に関係なく唯の個体差かもしれませんが。

close-up of fresh pitcher
faint striping can be seen


この前開いたピッチャーをよーーく拡大してみると、うっすらとストライプっぽい線が。おわかりいただけただろうか。

a few days after pitcher has opened, more established striping revealed

数日後、色づいたピッチャーとともにストライプはよりはっきりと。将来どんな見た目になっていくのか楽しみです。

the latest photo of this plants

そして最近は新しいピッチャーを膨らませています。くるんと猫背の可愛らしい蕾を準備中です。このピッチャーが完成したら改めて記事にします。

[追記]記事にしました!

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii H/L Murud Y's (Plant 2)

ボルネオ島固有種でありながら生息範囲が広く、分布ごとに形質や生育特性に幅広いバリエーションがあるN. veitchii(ネペンテス・ビーチ、ヴィーチアイ)。 そんなN. veitchiiの中でも、このムルド山由来のものは執筆時点で国内で最も入手しやすく、価格も安価なものの1つではないかと思われます。 山田食虫植物農園が

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