Nepenthes veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 2)

By b.myhoney - 11月 18, 2021

ボルネオ島固有種でありながら生息範囲が広く、分布ごとに形質や生育特性に幅広いバリエーションがあるN. veitchii(ネペンテス・ビーチ、ヴィーチアイ)。

そんなN. veitchiiの中でも、このムルド山由来のものは執筆時点で国内で最も入手しやすく、価格も安価なものの1つではないかと思われます。

Nepenthes veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 2)

山田食虫植物農園が多数販売する系統で、由来はオーストラリアExotica Plantsが昔販売したN. veitchii (a)と(d)です。

N. veitchii (a)はストライプ無しのgolden peristome、(d)はロングネックのstriped peristomeです。

その辺りの経緯は過去の記事にも書いてあります。

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 2) 

G.Murud産はKelabit高原の典型的フォーム?

ムルド山(Mount Murud, マレー語でGunung Murud)はサラワク州最高峰の山(2,424 m)でありながら、英語版Wikipediaを斜め読みした感じだと植生自体は固有性が高くなく、1,500 m以下の生態系は周辺の他の山々にも共通して見られるもののようです。

Nepenthes veitchiiは高地性といってもせいぜい1,600 m程度までなので、ムルド山の個体は上記の独自性の低い植物相に含まれると思われ、Kelabit Highlandsの周辺の山々(例えばBatu Lawiなど)と割と近しい可能性が高いのではないかと考えています。


両山は直線距離で10 kmそこそこしか離れていない. via Google Map
ムルド山のすぐ近くのBatu Lawi Hills (マレー語でBukit Batu Lawi、2,046 m)由来のN. veitchiiと言えば、どちらかと言えば細長いピッチャーにフレア形状の襟を持つ個体群で、有名なMaliau BasinのN. veitchiiと同じく木の幹を抱いて林冠にまで登る生育習慣を持っていることで知られています。

Batu Lawi産に限らずKelabit高原の典型的な高山性N. veitchiiは、縦長のピッチャーとフレアの大きい襟を持つことが多く、このムルド産のN. veitchiiもそれに当てはまる特徴を持ちます。

ムルド山の個体群が木に登るという報告はないので恐らく登らないのでしょうですが、Batu Lawi産などに近しい由来を持つという推測はあながち大間違いではないのでは、ということを調べながら思いました。

樹幹を抱いて木に登る、という一部の高地性N. veitchii独特の生育習慣がどこから来ているのかを想像すると、恐らく木々が生い茂る中で光を求めての意味合いが大きいので、他の高地性N. veitchiiと同じく日照は好きなのだと思います。

ちなみにですが、N. veitchiiは低地性(lowland form)と高地性(highland form)で大きく異なる特性を持っているので注意が必要です。

低地性は主に着生種で、細長い葉とピッチャーを持ち、木の幹や川の近くなどで見つかります。高地性ほど光を好まないと言われます。

一方の高地性は地生的で、幅広の葉を持つことが多いです。ケラビット高原の個体群には木を登るものが見られますが、同じケラビット高原のBarioという地区の個体群は独特で、丸々としたピッチャーを持ち、木には登らず地を這います。

N. veitchiiの適応力に甘える

葉は厚くて硬さがあり、蒸散を抑えることができるつくりになっていて乾燥に強そうです。


N. veitchiiは根が発達する方ではなく、むしろこの手の植物は根が湿潤な状態を維持すると窒息なのか蒸れなのかはともかく調子を崩すことが増えるようです。わが家では通気の良い用土に植え、乾湿のメリハリをつけるような灌水を意識しています。

N. veitchiiは広い分布域からも伺えるように温度など環境に対する適応性が比較的高いほうです。わが家では多少の夏の暑さでも平気そうにしています。

特にこのY'sのN. veitchii H/L Murudは頑丈で、2株育てていますがどちらも生育が旺盛なように思います。

高地性N. veitchiiはHighlandと呼ばれるものの実態はほぼ中間地性で、低地性の環境でも良く育ちます。逆に寒すぎる方が苦手なようで15℃以上が快適な目安になると思います。

わが家のように乾いた強風が吹き、夏場の日照も強めなスパルタ環境でも気にする素振りを見せず、良いペースで葉を展開して全ての葉にピッチャーをポコポコと付けてくれる優良な系統だと思います。

中間地性~高地性の原種としてはかなり育てやすい方に入ると思いますし、値段もお手頃で簡単には枯れず、Barioのように丸くはなりませんがそれなりの確率で綺麗なストライプ襟を持つ発色の良い個体が手に入りますので、初心者の人やホムセンネペンから1歩進んでみようかなという人には結構おすすめできる系統なのではと思っています。

striped peristome of the former pitcher aged into darker yellow / red color

一つ前のピッチャーも綺麗なストライプでしたが、時間が経つにつれ赤色と黄色のグラデーションに変化しました。

N. veitchiiって生長するごとにピッチャー形状が変化して飽きないですし、同じピッチャーもエージングで様々な表情を見せていくところが個人的に好きなポイントです。


最新のピッチャーもピンク色の発色がよく、自然と将来に期待してしまいますね。

次はどんなピッチャーを付けてくれるのか楽しみです。

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