Nepenthes sibuyanensis NE-109 'Red pitcher' MT

By b.myhoney - 7月 29, 2022

梅雨の戻り感がありつつも季節は確実に夏になっていて、連日のように繰り返す土砂降りの雨と暑い日を過ごしています。

うちでは、主に中間地性からせいぜい高地性の入門種の植物を低地性環境でも栽培できるように鍛えているので、このような過酷な状況にあっても今のところは元気です。夏が終わり疲れが出る頃には果たしてどうでしょうか…?

N. sibuyanensis NE-109 'Red pitcher' (Malesiana Tropicals)

このMTのシブヤンは'Red pitcher'という栽培品種名がついており、その名の通り真っ赤なピッチャーを付けます。けっこう昔からある系統のようで、最近の優良クローンに比べれば袋はやや縦長になりますが、とにかく色味が綺麗ですね。

開いたばかりのピッチャーは、襟の白さとのコントラストがとても美しかったです。

毎度お世話になっているMarcello Catalano氏のデータベースによるとNE-109の性別は「batch」となっており、ということは複数クローンあるのでしょうか?どの個体を見ても同じようにきれいな赤色をしており、このDBを見るまではてっきりシングル・クローンだと思っていました。

蔓の先端は日陰を求めて彷徨った形跡がある

本種はピッチャーを地際に埋めるように付けるというのは有名で、蔓の先端が接地することがピッチャー形成(膨らみ始める)のトリガになっているような気がします。

また、自生地でも日晒しのピッチャーが少ないとされることからも想起できる通り、ピッチャーを日陰に隠すように鉢の裏側へ蔓を伸ばしていきます(これらは本種だけでは無い気もしますが、本種は特に顕著)。蔓の先端が日陰にあるという条件もひょっとするとピッチャー形成を促進するかもしれません。ちなみに上の写真は撮影用に株を取り出してきているので蕾が手前側に来ています。

N. sibuyanensisを記事として取り上げるのは初めてなので、文献から得られる本種の情報を備忘でまとめようかとも思いましたが、長くなるので別の機会にしようと思います。


膨らんできた蕾が真っ赤です。今回付けたピッチャーは蕾の段階のときが最も赤く、蕾ながら栽培スペース内で異様な存在感を放っておりました。


ほどなくフタが開きました。ちょっと襟のところを失敗していますが、真っ白な襟がきれいです。襟の内側に牙構造がしっかりと見えますね。

赤系のシブヤンはもともと葉の縁が赤くなりやすいのですが、この株は冬の間の寒さや春以降の葉焼けでやや傷んで見えます。それでも最新の葉は健康そうな色。


そして株元に目をやると、根本から2芽の脇芽が生えています。ゆくゆくこのどちらかに更新して主茎を挿そうと思います。

面白いことにこれらの脇芽もいっちょ前に2本の蔓の先を苔の中に潜り込ませ、準備万端となっています。



しばらくそのままにしておいたのですが、気づいたときにはガチガチに植えたミズゴケとプラ鉢の間で蕾はぺしゃんこになりながら育っており、あまりに不憫だったので引っ張り出してあげたのでした。

仮にそのまま放置していたら土中でピッチャーを完成させて、話題の新種「Nepenthes pudica」になっていたかもしれません…笑

N. sibuyanensis NE-109 'Red pitcher' (Malesiana Tropicals)
Aged pitcher

しばらくするとピッチャーのエージングが進み、渋い雰囲気となってきました。襟の外側から中心部にかけてのグラデーションがとっても好みです!

ピッチャー開口部のネックが立ち上がり、襟の周辺部が波打つなど、本種に特徴的な表情となって完成しました。この段階ではRed pitcherというよりPink pitcherといった風情ですが、それも可愛くて良いですね。

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