Nepenthes veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 2) 導入から1年少々が経過した

By b.myhoney - 7月 19, 2022

特に国内ではN. veitchiiといえばBario産(N. veitchii Bario)という風潮が強くて、あまり人気がないように見えるG. Murud(=Murud山)産ですが、私は個人的に結構好きです。ピッチャーはやや縦長ながら、襟がフレアに広がる個体が多く、典型的な高地性N. veitchiiといった趣。またしばしば強めのストライプが入ります。

N. veitchii H/L Murud (Y's Exotics)

安価でしたし、N. veitchiiはいくつあっても困らないので(謎)、個体差に胸を躍らせながら2株導入しています。その2番目に導入した株(便宜上、Plant 2と呼んでいる)は、1番目に比べて発色が濃くピッチャーがやや寸胴な個体です。


ピッチャーは完成からほどなく色が濃くなっていき、派手な印象を見せるようになります。襟や袋の発色は、個体差の他に日照や温度など生育環境にも依存する部分があるのですが、今回のピッチャーはストライプの入り方が綺麗でした。


この系統のN. veitchiiはそれほどピッチャーが丸くなりません。この個体は比較的寸胴な方ではありますが、それでも株が充実してきてもバリオ産のように球体のようなピッチャーとはならず、比較的細長いままです。また、生育特性も地を這おうとするバリオ産のものとは異なり、ロゼットを維持して上へと生長してきます(多分)。

その一方で、かの有名なMaliau Basin(マリアウ・ベイスン、マリアウ盆地)のN. veitchiiのように木の幹をグルグルっと抱くように木登りしたりもしないと思われます。あれはごく限られた特定の産地の個体群にのみ見られる特性のようなので。

2株揃いで

わが家のN. veitchii H/L Murud、2株揃って。発色や形状に個体差が認められますが、どちらも綺麗なストライプが入るので気に入っています。見た目以外に生育スピードにも違いがあって、Plant 1よりもこちらの2の方が葉の展開ペースが有意に早いのです。無菌播種による実生苗のため、生育の早さや逞しさに個体差があるのは当然です。

ステムは太くなってきている

株の全景


ステムの太さからはがっしりと株が作りこめているのではと自負していますが、葉の展開ペースの順調さの割に株の直径はあまり大きくできていません。これには心当たりがあって、現在は小さなプレステラのプラ鉢に植えてあり、恐らくこれを鉢増しすればもう少し良いペースで大きくなっていくのだと思います。

N. veitchiiと一口に言ってもボルネオ島内のその分布は広く、それを反映して生育特性には地域差があって、大別して高地性、バリオ(及び周辺村)産、低地性と分けられると私は認識しています。この系統や、Exotica Plantsの(k)や(h)など(非バリオ産の)高地性N. veitchiiを育てていると、「N. veitchiiは乾かして育てる」のイメージに比べて案外水を好む(より根からの水分供給に依存する)ような印象を感じます。低地性は着生植物の色が濃いですし、バリオ産も比較的乾いた用土に耐えるので根腐れの懸念から「乾かして」というのは理にかなっていると思います。

栽培スペースのN. veitchiiコーナーで、他の小苗に囲まれて

思うに、N. veitchiiの「乾かして」というのは、古くから栽培下に導入されている着生植物の低地性や、近年広く栽培が進んでいるバリオ産の経験から言われている部分が大きいのではと思います。この系統が属する高地性は、わが家の環境(屋外の乾風吹きさらし)ではもっと根からの吸水を充実させてあげるべく、もう少し鉢を大きくして保水力高めにしてあげることで、株自体も拡大していくのではと睨んでいます。

というわけで近いうちに鉢増しを目論んでおります。この見立てが正しいかどうかは後の歴史が明らかにしてくれるでしょう。保水力が高くなって根腐れした、なんて結果になっていたりして。

それと、「おとなしく加湿すれば良いじゃん?」というツッコミは無しの方向で(笑)

導入当時の株


販売されているN. veitchii H/L Murudの苗は基本的に緑色をしていますが、導入後にしっかりと光に当ててあげて株が充実してくれば、自然と赤茶色の色味を見せてくれるということが私の写真からも分かると思います。

それでも、このPlant 2の導入時には、色々な株の写真を見比べながら少しでも発色の良好そうな兆候を感じる個体を導入した記憶があります。例えば、葉の焼け具合に比べてピッチャーの方が色濃く発色している、など。とはいえ、発色はそのときの日照条件や温度、株の日光への慣れ具合などによって大きく左右されるので、あくまで参考程度、気持ちの部分のおまじない的要素にしかなりませんが、とは言え私的にはこの株が現在見せてくれている発色は結構気に入っています。

最新のピッチャーの経時変化

一番新しいピッチャーはストライプがほとんど見えない襟をしていましたが、時間の経過とともに次第に現れてきました。一時の発色だけを見て個体の素質を判断するのでは不十分であることが良く分かります。

少しずつではありますが、新しいピッチャーが完成するごとに襟の存在感が増してきており、成熟株への道を一歩ずつ歩んでいる感があります。こういう変化を楽しめるところも、実生苗から育てる楽しみの一つですよね。

N. veitchii H/L Murudの過去記事↓

bijou nepenthes: N. veitchii H/L Murud

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