Nepenthes peltata 'Yellow Phantom' x tenuis Y's

By b.myhoney - 7月 12, 2022

私はどちらかと言えばネペンテスを幼苗から育てるのが好きで、それにはいくつか理由があるのですが、まぁそんなわけでわが家にはブログ映えしない小さな株がたくさんあります。今日はそのうちの一つ。

N. peltata 'Yellow Phantom' x tenuis (Y's Exotics)

この冬に山田食虫植物農園(Y's Exotics)から導入しました。母株は山田農園が誇る超優良個体のN. peltata 'Yellow Phantom'、父株は個体情報は不明のN. tenuisです。よく思いますけど、優良個体の雌を持っているとそれだけで交配ではかなり強いですよね。それを軸に雄株をあれこれと組み合わせていけば良いので、もうそれだけで勝ちも同然です(?)。

この交配は、N. peltata 'Yellow Phantom'を使った交配の中でも一番素晴らしいと(個人の意見ですが)思います。高名なN. peltata x villosaなどよりも良いと思います。もちろん個体差はあるのですが、これまで見てきたどの個体も素敵な色合い、襟、そしてコロコロ具合でした。まだリーフスパン3 cm程度ですが、個人的に将来がとても楽しみな株です。

雌親のN. peltataは自生高度865~1,635 mと広い分布域から想像できるように強健で育てやすく、また雄親のN. tenuisも1,000~1,200 mとほどほどの高度で比較的耐暑性がありスマトラ系の中では育てやすいとされるため、それらの交配種では雑種強勢を得てより簡単なのではと想像しています。



入手したばかりの頃はこんなにひょろひょろの苗でした(今もひょろひょろですが)。

それをポットから抜いて、用土を崩さずそのまま周りにミズゴケを足してスリット鉢に植え付けました。その頃はまだ気温も低かったので、しばらく簡易温室で管理していましたが、特に加湿などしていない温室でしたので乾燥など環境の変化により葉の枯れ込みが進み、導入から一ヶ月ちょっと経った頃にはアクティブな葉がパッと見2.5枚というヤバそうな見た目になりました。


さすがにこのサイズでこの貧相な状態になるとヒヤヒヤするのですが、新芽は動いていたのでそのままの環境で動かさないことにしました。下手に環境をコロコロ変えるとまた植物にストレスが掛かり、適応するためのエネルギーを浪費させるので、よく見極めてこのままで大丈夫だと判断したときには動かさない・いじらないというのも大事な管理です。強健と思われる交配だけあってここから無事に立ち直っていくわけですが、「小さい苗から育てるのが好きなんです」などと言いながらもきちんと湿度を維持できるケースを備えていないあたり、自己矛盾も甚だしいですね(笑)

まぁ、だから手を出すのは育てやすい種だけと決めているわけですが。設備など手がかかりすぎる難しい種には手を出さず、なるべく肩肘張らずにがっしりと育てるというのを大方針にしているので。

幸いにも私はヴィロサやエドのような牙系にはそれほど惹かれず、N. veitchiiやN. peltataなどコロコロしていてカラフルな、個体差の豊かな品種にとても魅力を感じるのです。そしてこれらの種は冷房設備のない低地性環境でも十分に育てられるわけです。


そして現在は健康そうな葉を展開し、まだ小さくも以前よりはサイズアップしたピッチャーをつけています。蓋や翼の先端に着色が見られるあたり、N. tenuisの影響を感じます。この段階のN. peltata幼苗のピッチャーは大抵緑一色ですので。

梅雨が終わったというのに梅雨のような天気が続いたこと、ドライアウトが怖くて気持ち水分多めになっていることでミズゴケが早く痛みそうです。もう少し大きくなったらドライアウトしない範囲で乾かし目にしないとですね。


どちらかと言えば幼苗から育てていくのが好きなのは、生長に伴ってピッチャーが変化していく過程を見れるというのも理由としてあるのですが、このように植物が自らの生理機能によって環境に適応した葉を展開するようになり、がっしりとした姿に育ってくれるというのもあります。

経験上、湿度、温度が整った保護環境である程度のサイズまで育った株をわが家の屋外環境にもってくると、付いている葉が環境に合わなくなるので、大抵の場合に植物はそれまで付いていた葉を何枚か落とすことになります。そして、新たにそれまでよりも小さな葉を展開することになり、株の仕立てのバランスが悪くなるのです。

数センチのLSから育てていくのは時間はかかるのですが、どんなピッチャーになっていくのかを日々楽しみにしながら、次第に環境に合った姿の株に育っていくのを見守ることはきっと忍耐に報いるものと思いますし、より愛着のある株になるのではと。その過程でドライアウトなどの凡ミスで枯らすことがないよう祈りながら、今後も生長記録を付けていきます。

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