Nepenthes veitchii (k) EP 少しずつ、着実にステージを登る

By b.myhoney - 3月 14, 2022

天気予報を見ていて先週ぐらいから最低気温がおよそ5℃をキープするようになりそうでしたので、週末にわが家の比較的寒さに強い交配種と高地性原種をいくつか温室から出して屋外管理としました。

とは言え10℃を切る最低気温は大抵のネペンにはまだ少し寒いですので、恐らく最初のうちは少々動きが緩慢になるものと思いますが、それでも温室下段の日光があまり入らない陰鬱とした環境にあと1ヶ月ほど置いておくよりは、若干の寒さに晒してでも日光や一日の気温の変化に適応させていきたいなという思惑に基づく判断です。

また、春先の日照は思いのほか強いですので、寒冷紗で遮光をしています。

けっこうスパルタというか雑なんですよね、僕。緻密な管理はあまり得意ではなく、どちらかと言えば自然の摂理や植物の適応力に期待しようという方向性です。春先の立ち上がりが上手くいくと良いですが…

さて、お気に入りネペンの一つであるN. veitchii (k) EPが最近(と言っても結構前ですが)新しいピッチャーを付けました。N. veitchii (k)は今から20年近く前に、オーストラリアはクイーンズランドのExotica Plantsがリリースした、ストライプ個体同士の両親を用いた高地性N. veitchiiの個体群です。

以前の記事はこちら。

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii (k) EP 初めてのピッチャー

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii (k) EP この季節のピッチャーは嬉しい 

この個体は一昨年の導入時、まだまだ経験が浅かった私は(今もですが)導入してすぐに植え替えを敢行し、しかも鉢と用土の選択を間違えるというミスを犯したまま無加温の冬季管理に突入してしまったがために、その後半年以上もピッチャーを付けずに調子を落としていました。

それでも枯れなかったのはN. veitchiiの強健さによるものだと思います。(k)もEPの例に漏れず実生個体群なので本個体も唯一無二のもの。いくら挿し木増殖の個体とは言え、フラスコ内で維持されている限り絶えることなく次々と増殖させられる培養苗とは異なり、途絶えさせてしまえばこの世から永遠に失われてしまいます。

貴重な株を枯らさなくて本当に良かった。

N. veitchii (k) EP
Just popped!

新しいピッチャーの開きかけの頃です。冬季の日照不足を反映してか、やや小ぶりな仕上がり。


N. veitchii (k)はピッチャーが赤みを帯びた良好な発色の個体が多く、この個体も控えめながらピンク色が綺麗です。ストライプの入り方も薄いものから濃いものまでバリエーション豊かで、ピッチャー形状も縦に長いものからバリオ産に近い丸みを帯びた個体まで様々です。


開きたてのフレッシュな頃。大きさは小ぶりながら、以前のピッチャーよりも襟が幅広くなり、成株への段階を少しずつですが昇っている感覚があります。

(k)はその優れた素質から世界的に多くの交配に用いられてきたようですが、特に米国ではその傾向が強いようです。近年では例えばCarniveroが、N. veitchii (k)を片親に使用した素晴らしい同種間交配をリリースしています。

N. veitchii (#5 x 'Pink Candy Cane') from Carnivero
左側の母株、#5はEPの(k)。父株の'Pink Candy Cane'は同じくEPの(h)

N. veitchii ('Big Mama' x 'Pink Candy Cane') from Carnivero
母株の'Big Mama'は(k)。

N. veitchii ('Big Mama' x 'The Wave') from Carnivero
'Big Mama'は上述の通り。'The Wave'はケラビット高原由来の実生個体。

N. veitchii Barioとの比較

EPの(k)は、ポピュラーなバリオ産のN. veitchiiほど丸くはならず、細長いピッチャーの個体がどちらかと言うと多いのが特徴です。


EPの(k)や(h)など高地性N. veitchiiは、なんとなくですがバリオ産よりも若干高地性の性質が強いような気がします。ややこちらの方が夏に暑がるような?

高地性と言ってもバリオはせいぜい標高1,000 m程度ですし、年中18℃~25℃といった気候なので、高地性というより中間地性という方が実態に合っています。「高地性」という名称自体、昔からある「低地性」の個体群と区別するために便宜的に付けられている側面が強いようですし。

適切に鍛えたバリオ産の株は、わが家の環境において静岡県の猛暑でもそれほど苦にせず夏を越すことができているように見えます。それに対して、EPの(k)や(h)はやや夏に暑がりますね。Barioよりももう少し標高が高い地域から来た個体なのでは?と勝手に推測しています。


もう少し時間が経過した襟は少しだけ巻いてギザギザと波打ち、色が少しだけ濃くなって黄色っぽいベースに赤いストライプがはっきりとしてきました。これでほぼ固まったようです。

生長はじわじわとではありますが、ややそれらしい姿になってきて嬉しいですね。


蒸れを恐れた結果として素焼鉢に砂利系用土(しかも中粒!)というスーパードライな組み合わせで植えてしまい、なんとかベラボンマルチングで表土からの蒸発を抑えるべく誤魔化してはいますが、葉をV字型に畳んだ様子やなかなか大きくならない葉の大きさを見る限り乾きすぎな感は否めないです。日中は仕事をしていますので灌水頻度を増やすなんてことはできませんし。

根の蒸れは嫌うと思いますのであくまで通気、水捌け良くというのは気を付けながらも、いずれもう少し水持ちの良い鉢に植え直した方が良いのかもしれません。

こういう無駄な植え替えをなるべく少なくして、根の伸長を阻害しないように出来るのが一番良いんですけどね…。初期の植え替え時に一発で最適な用土と鉢を見抜けるように経験と訓練が必要なようです。

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