Nepenthes veitchii BE-4033 'Bario Highland' grex-2 最近のようす

By b.myhoney - 12月 13, 2021

スリランカにある世界的なネペンテスナーセリーのBorneo Exoticsが2020年10月に導入した比較的新しいバリオ産N. veitchiiが、BE-4033という品番の商品です。

少し前に完成した新しいピッチャーが以前よりもややそれらしくなったので記録を残しておきます。

N. veitchii BE-4033 'Bario Highland' grex-2 (Borneo Exotics)


このBE-4033品番でリリースされる個体群の両親はともにバリオ産で、前回のこちらの記事にまとめてある通り、ゴールドフォームの母株と赤系ボディに強ストライプの父株。

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii BE-4033 'Bario Highland' grex-2 小さな進捗 

良さげな交配の予感

もともとN. veitchii自体ピッチャーの色かたちは生長につれて変わり、ある段階で突如化けるようなこともしばしばという ギャンブル要素の強い 夢のある原種です。

この品番はBE-3734と同じく非常に多数のクローンからのランダムセレクションで、さらに黄色系×赤系という両親の子孫なので個体差が大きく、成株まで育ててみないと本当の正体は分かりません。しかし、ここまで観測している限り(少ないサンプル数ではありますが)BE-3734に比べてピッチャーの発色も良好で、ストライプの入り方も派手な傾向があります。

一部の販売者は(恐らく非公式ながら)キャンディストライプ("Bario Squat - Candy Stripe”)という触れ込みで販売しているようですが、その名に恥じないなかなか良い交配なのではないかと思っています。

whole plant of my BE-4033

全景。

導入から半年あまり。当初は環境の変化や夏の暑さへの適応に時間を要し、生長やピッチャー形成が停滞した時期もありました。

いまではだいぶ環境に慣れてきたのか、順調に葉を展開するようになってきています。来季の飛躍に期待がかかります。


襟のクローズアップ。

まだ小さいながらも、なかなか綺麗なストライプが入ってくれます。

いくらN. veitchiiが生育につれて色かたちを変えるとはいえ、幼い時のピッチャーの見た目は個体差を推定するヒントになると思います。この株がさらに小さかった導入当時、ひとつだけ付いていたピッチャー内壁が色濃い斑点模様で真っ赤だったことが良好な発色を期待させ、襟に細かく濃密なストライプが入っていたことが印象的でした。

そのたった一つの袋の形状がバリオ産にしてはやや細長かったためバーゲン価格で入手することができましたが、今付いている袋は幸運にも比較的丸みを帯びているのが本種の予想できなさを表しているようです。

as time passes, peristome slightly rolled back and its striping became colorful

襟はほぼ広がったままですが僅かに後ろに巻いて完成します。時間の経過とともにストライプのコントラストが強くなっていく様子が分かると思います。

出来立てのフレッシュな時期、少し時間が経って味わいが増す熟成期と、ひとつで二度美味しいあたりはまるでバナナのようです(?)



新しい葉の表面はクチクラ(Cuticula, 英語でいうところのキューティクル)が形成されてツヤツヤしており、乾燥気味の管理に順応した結果の振る舞いを見せています。

そして、蔓の先端では次のピッチャーの準備が進められています。N. veitchiiはこの段階である程度形になっていると、高い確率でピッチャーが作られるような感覚がありますね。

冬季の管理など

冬季の管理はいまのところ、簡易温室内で昼間30℃程度、夜間15℃程度、表面の鹿沼土が乾燥しすべて白くなった頃合いに灌水しています。

現状の環境では温室内の空気の流通が十分でなく、病気の蔓延を恐れて積極的な過湿はしていません。

N. veitchii Barioはピッチャー内に水を保っておけば、このように土中・空中の両方が乾燥していてもそれほど気にすることなく生長します。むしろ、根が濡れた状態で低温や高温に長時間当てると調子を崩しやすいふしがあります。

自生地Barioは一年通じて四季がないようなほぼ一定の温度変化をするようで、通年で日中25℃、夜間18℃といった温度範囲のイメージです。したがって環境構築はこのぐらいの温度を目安にするのが良さそうです。

降水量も通年で静岡県の春先から梅雨にかけてぐらいの雨が降ります。降水量の数字としては同じぐらいですが、想像するにしとしとと長く降る日本の梅雨とは降り方が違っていて、熱帯雨林気候らしくまとめてスコールとして降るのではと思われます。

Barioの気候について (Wikipediaより)

ですので、決して水が嫌いな種という訳ではないと思いますが、自生環境では晴れ間とスコールの繰り返しにより根回りの水分量はかなり変化するような状態にあると思われますので、活動量が低下し吸水が減る低温下・蒸れが生じる高温下で根回りに水分が長時間停滞するのを避けるべき、ということだと今のところは理解しています。

その点で言えば、通気・通水良い用土、鉢に植えて、乾湿に意識した灌水をするというのはある程度理にかなった方針であると思います。


室内無加温だった昨年と異なり今季は温室で加温をして冬越しをするため、春以降の生長の立ち上がりに違いが出るのか今から楽しみです。

【追記】次のピッチャーが完成しました!
bijou nepenthes: Nepenthes veitchii BE-4033 'Bario Highland' grex-2 変わっていくということ

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