Nepenthes veitchii (h) EP 真冬の新ピッチャー

By b.myhoney - 1月 17, 2022

新年に入ってけっこう忙しく、しばらく間が空いてしまいました。植物の方はと言えば、ゆっくりと生長しながら冬を越しています。

ヒーターで加温されているとはいえ、少々雑に断熱した簡易温室というとりあえずの生命維持と越冬を目標にした環境では最初からオンシーズン中のような生育は見込んでいません。枯れたり弱ったりしないことを目標に構築したので、生長してくれるだけで頑張っていると言えます。

冬季の間は太陽の高さの関係でただでさえ日向の時間が短いわが家の育成スペース(屋外)ですが、断熱のためのプチプチに包まれたビニール温室ではさらに日照が遮光されます。

その他の原因として、閉め切って空気の動きが制限されている(一応ファンは設置済ですが)ことや、乾燥への対応で気孔が閉じがちになっていることなどにより、光合成に寄与する二酸化炭素の取り込み効率が低いのも影響しているとは思いますが、恐らく日照不足が生長鈍化の一番の要因だろうと見ています。

そこで人工光源の追加も考えられますが、効率の優れるLED光源は直進性(≒単位面積あたりの照射エネルギー)が高く、葉焼けしない距離を稼ぐために温室の高さが必要に(=ヒーターの大容量化が必要に)なります。拡散板などでうまくLED光を拡散できれば良いのですが、そうなってくると内張りにアルミを貼って散乱光を有効活用したくなってしまいそうな。まあ、そこまではとりあえず良いかなと。冬もなんとなく折り返した感ありますし。

気孔を閉じさせないように加湿で空中湿度を確保する手もありますが、ファンがあるとはいえ空気の動きが停滞しがちな閉め切った空間では病気の跋扈が怖いのです。確実な生存を優先させたく…

そんなこんなで、「肩に力が入りすぎず無理のない育成環境を」というコンセプトで、冬季の簡易温室はこんな感じになっているのです。

わが家のマジョリティを占めるN. veitchiiのように葉の厚い種は乾燥にかなり適応してくれますし、原種の中では温度適応性もかなりある方ですので、ハイテクを駆使しなくてもぼちぼち生長してくれるというわけですね。

さて、オーストラリアのEP(Exotica Plants)のN. veitchii (h)です。山田さんのところで入手。小さい株で、脇芽を挿したものだと思われます。

N. veitchii (h) (Exotica Plants)

交配親不明とされる(h)ですが、Gunung Murud(ムルド山)などKelabit高原に典型的な高地性フォームの交配なのだろうと推測しています。有名なバリオからそう遠くない産地の筈ですが、バリオのように真ん丸にはならず。ケラビット高原の非バリオ地域の高地性N. veitchiiにありがちな、縦長の袋に広がるフレアの襟が特徴的。

一説によればストライプ個体同士の交配の子孫で、ストライプ襟の個体群をN. veitchii (k)、プレーン襟の個体群をN. veitchii (h)とラベル付けして販売したとも言われていますが、詳しいところは不明。EPの例に違わず実生株で、1個体ずつ個体差がある。

EPから販売されたのは20年ぐらい前なのではないかと思います。

過去の記事はこちら。

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii (h) EP

梅雨が明けて以降しばらく晴れの日が多かったのですが、接近中の台風9号、10号の影響で週末から天気は下り坂になる模様です。そして11号も発生したようですね...。 日差しが遮られて暑さが緩和されるのなら屋外で栽培中の植物的には良い面もありますが、気温があまり下がらないようなので根の蒸れが心配になります。 なにより、風雨による被害の方が心配ですね。 まだまだ小さいN. veitchii (h)ですが、新しい袋が完成し蓋が開きました。

最近、新たな袋を完成させました。

Newly opened pitcher for this small plant

まだまだ幼苗の袋という感じで、ヴィーチアイのトレードマークである襟の発達もこれからという感じです。ただ特有の毛深さは十分現れています。

Closeup of new pitcher

大多数のN. veitchii (h)はストライプ無しの襟を持ち、本個体も恐らくそうだと思われます。

この個体、ストライプこそないもののピッチャー内壁と蔓の部分がかなり赤く染まるのが特徴的です。たしかに(k)と似ている?


膨らませている最中の袋の背筋にもピンク色が差していたので撮ってみました。特に意味はありません。

背中まで毛深いなんてまるでオジサンみたいですね。 


前の袋。

前回とあまり変わっていませんね…。フレアな襟が魅力的な成熟した姿を早く見てみたいです。

着生種の色が強い低地性N. veitchiiとは異なり、地生種寄りとして扱うのが良いと思われます。まあまあ根も張るようです。ただ通気を好むものと思われますので、もう少し株が充実してきたら粗めの用土に植えるのが良いかもしれません。


本種はストライプ襟でもないですし袋も丸くならず、いわゆる人気筋のveitchiiではないですが、個人的にはなかなか魅力を感じます。フレア状に広がるプレーンな襟も透明感があっていいですよ。

同じEPでも(k)や(m)などと違って(h)はそれほど大切にされず(?)、山田食虫植物農園以外で維持・増殖させている業者を知りません。けっこう貴重なのでは?

最近は山田さんのところで、本種とN. edwardsianaを交配させた小さな実生株も販売されていますね。Y'sに(h)が全部で何個体あるのかは知りませんが、本株と同じクローンが交配に使用されたのかもしれません。

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