Nepenthes veitchii 'Murud' x x alisaputrana Y's

By b.myhoney - 8月 08, 2022

ボルネオ島キナバル山の誉れ高い自然交雑種、N. x alisaputranaを片親に使用した交配種です。山田食虫植物農園(Y's Exotics)にて購入しました。


N. x alisaputranaはキナバル山の標高2,000 m付近のPig Hillというエリアで確認されるN. rajahとN. burbidgeaeの自然交雑種です。古い文献によると、Pig HillではN. burbidgeae(1,900~1,950 m)とN. rajah(1,950~2,320 m)の自生高度の境界にあたる1,930~1,950 mほどにおいて、アリサプトラナが自生するとされています(J.H.Adam, C.C.Wilcock & M.D. Swaine, 1991)。

すなわちこの交配種は、形式的にはN. veitchii 'Murud' x (rajah x burbidgeae)あるいはN. veitchii 'Murud' x (burbidgeae x rajah)のように捉えることもできます。実際にはもっと何度も複雑に自然交雑しているんでしょうけど。

ちなみにどうでもいいですが、記載論文など初期の記事においてはN. x alisaputraiana(アリサプトライアナ?)と表記されています。いつの間に現在の名前になったのでしょう?種小名は国立公園(Sabah National Parks)のディレクターだったLamri Alisaputra氏への献名です。

two subsequent pitchers
previous (left) and newer one (right)


母株はExotica Plantsに由来するムルド山のN. veitchiiです。この高地性N. veitchiiもフレアな襟が特徴的な個体群ですが、父株にも襟が幅を持って広がるN. rajahの血が入っていますので、主張の強い襟になりそうな予感がします。

現に、ひとつ前のピッチャーに比べて最新のピッチャー(右)はいくぶんインパクトのある襟となりました。円周方向すべてで幅広なところがなんとなくN. rajahの影響を感じます。


蓋の形状やフタ裏の蜜腺が作る模様はN. burbidgeaeっぽさがありますが、N. veitchiiの模様も混入しているような気がします。

父系の血によって蓋が大きくなるとカッコよくなりそうですよね。


時間が経つにつれて、襟の色合いは濃く落ち着いたものに変化していきました。ざっと見た感じだと黄色/赤/紫色の3色でストライプが構成されているように見えます。ところどころに差す紫色がN. burbidgeaeの血を感じる色合いで個人的には好きです。

N. veitchii H/L Murud x x alisaputrana (Y's Exotics)

ピッチャーは薄いピンク色というか肌色というか、なんとも言えない色をしています。株が大きく成熟するにつれて、N. veitchii H/L Murudの発色が次第に現れてくるのではないかと思っています。


x alisaputrana自体がもともと生育旺盛な自然交雑種と言われていて、それをさらにN. veitchiiに掛けた本個体の生育は順調そのものという感じです。輸送のストレスを受けても止まることなく、葉を展開するごとにサイズアップしてきました。


葉の雰囲気や新芽の展開の仕方などはN. burbidgeaeっぽいかもしれません。株の部位によって、3種類の親からの特徴の現れ方がそれぞれ違っているあたり、まだ株として幼い為に形質が不安定なところがあるのかもしれませんが、全体的にN. burbidgeaeの血をやや強く感じる個体ではあります。果たして将来どうなっていくのでしょうか。


あまり栽培例が多くない交配種のようで、調べても成熟した株の姿が出てきませんが、個人的にはとても楽しみだと思っている株の一つです。無論、親の性質的にフルポテンシャルを発揮する頃には間違いなく巨大になっている筈の株なので、それまでに栽培場所の拡張を計画的に行っていかなければなりません。大きな温室がほすぃ…

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