Nepenthes veitchii H/L Murud Y's Lab 個体差

By b.myhoney - 4月 13, 2022

気温はすっかり暖かくなり、屋外栽培の季節がやってきた感があります。これまで多湿の温室環境にいた植物を出す場合は、徐々に慣らしていく方が良いかと思いますが、わが家は冬季のあいだ乾燥した加温環境だったため、そのまま屋外に出してしまいました。←雑

N. veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 1)

マレーシアのサラワク州にあるGunung Murud (ムルド山)由来の高地性N. veitchii。Y's Exotics (山田食虫植物農園)さんがしばしば販売する実生個体群で、豪州クイーンズランドのExotica Plants (EP)からやってきたMurud産のN. veitchii (a)や(d)(またはその子孫)を両親に持つようです。

その辺についてはこちらの記事にも書きました。

bijou nepenthes: Nepenthes veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 2) 

ムルド産のフォームに限らず、栽培下に導入されている多くの高地性N. veitchiiは、いくぶん縦長のピッチャーを付け、襟が豪華なフレア状に広がる個体群が多いように見えます。人気のあるバリオ産(とその周辺の村のもの)のみが、例外的に真ん丸のピッチャーを持ち、匍匐状の生育を見せるなど特異な習性を有しています。

このムルド産、安かったので思わず2株買ってしまい、わが家には2株あります。

上に見せた写真は便宜上Plant 1と呼んでいる方です。この株は、もう片方に比べて幾分縦長のピッチャーを付け、襟がややひし形に広がり、発色はやや控えめでピンクっぽくなります。

こちらの方がやや生育スピードが遅いです。こちらの方が株としてやや幼いように見えるので、この辺は株の生育具合にもよるかもしれませんが。

N. veitchii H/L Murud Y's Lab (Plant 2)

こちらはPlant 2と呼んでいる方です。先ほどの1に比べて袋は寸胴気味で、襟は丸く広がります。発色が強くて、完成から日が経つとどんどん赤みを増していきます。

少し前のピッチャーは、 このように赤黒くなってきます…。

Dark red / purple pitcher of N. veitchii Murud plant 2

以前、「今回は親を厳選して一番赤いのを使いました。」みたいに山田さんはtwitterで言っていたので、この苗は恐らくその時の交配によって生まれた個体なのだと思いますが、赤いです。赤くなるN. veitchiiは沢山ありますが、このようなlowiiやpeltataのような赤黒い色になるものはそれほど見ません。

勝手な想像ですが、G. Murudに自生するN. lowiiの血を遠い過去に飲み込んだ個体群なのでは?なんて思っています。 

comparison of these two plants

こうやって比べてみるとより個体差が分かりやすいかもしれません。上がPlant 1、下がPlant 2です。

この2月に撮影した1つ前のピッチャーの写真でも、その傾向は分かります。

taken on this February
Plant 2 / Plant 1

冬季の日照の少なさによって、地味な色をしているのが一目でわかります。この品種は日照を浴びることで発色が良くなります。お日様って偉大ですね。

正直、こんな程度の個体差なんてどうでもいいじゃないか、という向きもいそうですが、N. veitchiiみたいな個体差の大きい品種の1つの楽しみ方かなーと私は思います。幼い頃の小さな差異が、生長につれて次第にはっきりと出てきて個体差として主張するのは、単純にわくわくするし楽しいです。

N. veitchiiって、高地性という名の付く系統も多くは中間地性的な性質ですし、高温・乾燥に適応性が高いですので、根の過湿さえ気を付ければ初心者でもそれほど枯らすことはないんじゃないかと思います。


このムルド産もかなり高温には強いような印象があります。ムルド山自体はサラワクで最も高い2,424 mですが、そんなに高くない標高の系統なのかもしれません。あるいは、実生を繰り替えすうちにわが国への環境適応を遂げたのかもしれません。私の場合、ハードめな環境で「コンパクトな草体に大きいピッチャー」を目標にしていることもあり、なかなかリーフスパンを大きくしませんが、整った環境ではすぐに大きくなるようです。

すくすくと葉を展開してくれるので登場頻度が若干高めになるかもしれないですが、今後も定期的に生長記録を付けていこうかなーと思います。

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