Nepenthes St. Pacificus
意外と侮れないホムセンネペン
近所のお店ではカクタス長田さんや大彰園さんのアソート、あとはお隣愛知県の農家さんで生産されたと思われるN. alataやN. x ventrataなどを見かける機会が多いです。
食虫植物アソートに混ざっているネペンテス(ウツボカズラ)は、どれもホムセンネペンと侮れない良い交配種だと個人的には思いますが、N. St. Pacificus表記の本品種はその代表格の1つだと思っています。
N. St. Pacificus |
N. St. Pacificusの園芸的な由来
N. St. Pacificusはカクタス長田さんの食虫植物アソートのラインアップに含まれる品種ですが、この交配種を作出したのはハワイのナーセリー、Leilani Nepenthesです。
このLeilani Nepenthesは、同じくホムセンネペンとして人気のN. Gaya(ネペンテス・ガヤ)も作出しています。栽培が容易で特徴ある見た目の園芸交配種を作ることに秀でたナーセリーという印象があります。N. Gayaは海外でも初心者向けネペンテスとして普及している様子ですしね。
ところで'St. Pacificus'はなんと読むんでしょうね?普通に読めばセント(セイント)・パシフィカス?
N. St. PacificusはN. ventricosa x N. biak (=かつてのN. insignis 'Biak')という交配種のようで、N. biakという聞き慣れない原種が片親に使われています。
Nepenthes biakの素性と自生地の様子
N. biakはビアク島固有の新種ネペンテス
N. biakはインドネシアのパプア州にあるBiak島という島固有のネペンテスです。話は少しずれますが、この島はかつて大日本帝国の戦略的空軍拠点があり、日米ともに多くの犠牲者を出した「ビアク島の戦い」の舞台となった激戦地としても知られています。
N. biakはかつてN. insignis(ネペンテス・インシグニス)のBiak島固有のフォームとして扱われていて、2018年に新種として独立した種となります。
少し調べたところによると、ビアク島固有のフォーム(N. biak)はパプアの本島のフォーム(ふつうのインシグニス、いわゆるTayeve form)と幾つかの違いがあるようです。
・N. biakの方がピッチャーが小さく、細長い
・N. insignisは襟が広く、N. biakは薄い襟
・その他、ステムの形状や葉の付き方などに違い
こちらのMarcello Catalano氏のデータベース
の写真を見比べると違いが分かりやすいと思います。
N. biakは海抜近く、石灰岩の海食崖に生えているのが良く見られ、たまにマングローブ林に着生的に生えるということで、根の通気を好む着生種の低地性として扱うのが良さそうです。
もう片方のN. ventricosaも乾燥によく耐えることから、今のところ通気性のある中粒の砂利系をベースにした用土で乾き気味に管理するようにしています。
栽培品の様子
左のピッチャーが開いた頃の株 |
右の方が襟や袋がN. biakっぽい。左はベントリ似? |
この用土に植え替えをしたのが今年の5月で、まだ十分に根付いていないためか、あるいは用土の乾燥のためか、なかなかリーフスパンは大きくなっていません。
ただ、屋外に適当放置で特別気を配らなくても葉っぱより大きいピッチャーを付けてくれています。
温室がないうちの環境では冬場が特に鬼門で、基本的には木漏れ日が差し込む程度の室内に取り込むだけの管理となりますが、そのような日も当たらず気温も低い(最低10℃くらい)の乾燥した室内に取り込んでもそれほど痛むことなく越冬してくれました。
今のところ、耐寒性、耐乾燥性、耐陰性に優れ、あと夏は若干暑がる気もしますが耐暑性も高く、総じて頑強な交配種だなという印象があります。
ちょっとワイルドな見た目のベントリっぽい感じの袋を付けてくれる育てやすい品種だと思いますので、皆さんも試しに育ててみてはいかがでしょうか。
[追記]夏を越えて感じたことなど、次の記事はこちらです。
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