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Nepenthes sibuyanensis (d) EP

By b.myhoney - 12月 15, 2022

一年の中で私が最も難しいと感じる季節は秋から冬に移り変わっていく時期で、その季節の最中にあって仕事とプライベートの両面で大きな変化があって忙しく、ブログ用の写真撮影どころか植物の面倒すら満足に見ることができないという事態に直面しています。

屋内派の方にとっては温度制御がしやすくなって特に高山性の調子が上がる頃に差し掛かっているところだと想像しますが、私のような屋外栽培者には日中は締め切ると暑くなる一方で、夜間や明け方には保温・加温が必要という繊細な制御が(本来なら)必要になる今日このごろです。

ただでさえ夏場の疲れが出やすい中で季節の変わり目を迎えるのは、人間にとっても衣服の調節の難しさ、暖房と寒い屋外の行き来等で体調を崩しやすく、それは植物にとっても共通して言えることだと思います。

そういうわけで、ここ最近は時間が取れない中、まずは「枯らさないこと」を目標に最低限度の管理しかできていませんでしたが、そろそろ幾分は落ち着いてきそうなので、少しずつながらブログを再開していこうと思います。まずは過去に撮りためた写真の清算から。

N. sibuyanensis (d) EP

わが家には何故かシブヤンエンシスが3系統いまして、これはオーストラリアのExotica Plants (EP)由来のN. sibuyanensis (d)となります。

↓MTの

bijou nepenthes: Nepenthes sibuyanensis NE-109 'Red pitcher' MT
↓BCPの
bijou nepenthes: Nepenthes sibuyanensis BCP

シブヤンエンシス、淡い色味のボディがころっ、ぼてっとしていて、とても可愛くて好みなんですよね。分類上はやや高地性寄りになりますが、ベントリコーサと同じ要領で通気を確保してやると、わが家のような屋外栽培でも夏場やや暑がる程度でそれほど問題なく育てることができるのも嬉しいポイントです。

EPの株はほとんどが実生個体です。N. sibuyanensisn (d)は、過去のブロガーの方の記載によれば、squat x largeというシブクロス(ネペンでは同種間の交配を指すことが多い)とあり、スクアットな、あるいは大きめの個体が現れやすい実生個体群なのではと想像できます。


本種は蔓の先端の接地がピッチャー形成のトリガになることが多く、8月頃から先端が徐々に膨らみ始めました。最初は平べったくて色も濃いのですが、そこから風船を膨らませるかのように丸っこく淡い色合いへとピッチャーが成長していきます。

このEP (d)は他の2株に比べて葉は革質で硬く、蔓もまるでちょっとした枝のような強度があります。


開きたての袋を覗き込むと、意外にも襟の内縁はキバキバしています。この内側のキバキバに加えて、ころっとした形状、色味、フタの見た目などから、どことなくN. villosaなどのを想起してしまいます。

本種が自生するシブヤン島は、いくつかの小島を挟んで、ボルネオ島やパラワン島と接続するような位置にあり、また他方はルソン島に隣接しています。

ボルネオ島やパラワン島の超苦鉄質土壌には大型のピッチャーを持つ原種が固有的に自生し、中には襟に牙が発達しているものもある一方で、ルソン島には広くN. ventricosaが分布し、その両島群の中間的な位置に陣取るシブヤン島にはそれらの種を組み合わせたような特徴を併せ持つN. sibuyanensisが自生しているのは非常に興味深いです。

これらの原種たちが過去にどのような進化を辿ったのかは分かりませんが、祖先に遡ると相互に関係している、なんてことがもしあれば面白いですね。


ぼてっとしたフォルムをしていて可愛いです。フレッシュな頃は淡いピンク色をしていて、襟も透明感のあるクリーム色をしています。


この個体はどうやら襟がやや幅広く、あまり巻かずフレア状に広がりトゲトゲする傾向があるようです。

ツルツルとした触感の襟にはいくつもの溝が穴の中心に向かって刻まれており、いかにも足を滑らせそうな様子。そして内縁の牙はよく見ると意外と鋭利で、罠の返しのようになっているので、一度落ちてしまった獲物が外に出るのは至難の業と言えそうです。

実際に、現在トラップの中にはGが落下しており、脱出できぬまま息絶えています。。


本種のピッチャーは時間の経過とともに変化する色味も見どころの一つ。

完成したばかりの瑞々しく淡い色味は、やがて襟の部分の着色から徐々に変化していきます。併せて、袋の斑点模様とフタの色も濃くなっていき、さらに時間が経過すると真っ赤になります(最後には赤黒くなります)。

この変化する間のどのフェーズも良いですし、最後の真っ赤に熟した姿もじつに渋ヤンエンシスです。

渋ヤンエンシス

N. sibuyanensis (d) EPは上でも述べたようにsquat x largeのシブクロスのようで、この個体はあまりsquat(重心低くしゃがんだ感じ)ではない気はしますが、真夏の屋外で低湿度という過酷環境でもそれなりの大きさのピッチャーを付けてくれるあたり、largeの方の血がやや主張している個体の印象ですね。


エージングが進んだ襟のクローズアップは実に渋くてかっこいいです。

牙系のレアな高地性種などが持て囃されている中で、それほど見向きもされていない感のある本種ですが、個人的には魅力あふれる原種だと思います。基本的に強健ですし。もっと魅力が広く伝わるといいです。


今よりも株が大きく充実した頃に、どのような迫力のあるピッチャーを付けてくれるのか楽しみです。

冬季に差し掛かった現在は栽培スペースの日照時間もかなり短くなってきて、さらに冒頭に述べたように十分に世話を出来ていない状況ではありますが、少しでも春以降の立ち上がりが良くなるように出来ることをしていきたいと思います。

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