Nepenthes palawanensis BE-4013 seed grown

By b.myhoney - 11月 15, 2021

最近はめっきり日の長さも短くなって、日ごとに冬の寒さは着々と忍び寄っていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか(誰)

他の人の栽培を見たことがないのでなんとも言えないですが、割と自分はスパルタ派だと思っていて、植物はなんとまだ屋外にあります(最近の最低気温9℃ほど…)。

しかし流石にそろそろ厳しい時期だよね、手を打たないとまずいよねということで冬越しの体制にいよいよ移行するわけです。以前の記事にちらっと書いたように昨年は屋内に取り込んだだけだったのですが、今年はスペースの関係もあり室内取り込みは厳しそうな情勢が見えてきました…!

なので、急遽方針転換して屋外に簡易温室を設置する方向性で、急ピッチで冬季対策を進めています!この辺りは後々記事にできればなあと思います。

さて、今日紹介するのはスリランカのナーセリーBorneo Exotics(BE)が最近リリースした実生個体のN. palawanensisです。

Nepenthes palawanensisの植物学的な特徴

Nepenthes palawanensis(ネペンテス・パラワンエンシス、パラワネンシス)はフィリピンにある固有種の宝庫、パラワン島のSultan Peak(スルタン・ピーク)頂上付近、海抜1,100-1,236 mにのみ自生する大型種となります。最大級のネペンテスの一つとされています。

2010年1月に発見され、Stewart McPhersonらにより記載されました。

スルタン・ピークは、同じく巨大なピッチャーを付けることで有名なN. attenboroughii(ネペンテス・アッテンボロギ、より正確には二―ペンティーズ・アッテンバリアイ、アッテンボロウギアイ)の自生地のMt. Victoria(ヴィクトリア山)と巨大な谷を挟みながらも隣接しており、本種もN. attenboroughiiの極めて近縁な種とされます。

N. attenboroughii (via Stewart McPherson)

ピッチャーは巨大と言われるN. attenboroughiiよりもさらに大きく、ネペンテスの王様と言われる最大種のひとつN. rajahに迫るほどで、高さ35 cmを超えるものがいくつも生えているようです。

Stewart氏の拳を飲み込んでかなり余裕がありそうな大きさがインパクト大ですね。



N. palawanensis (via Stewart McPherson)
N. attenboroughiiとの差異はピッチャー表面に赤茶色の毛が生えること、あちらがすぐに円錐型のアッパーピッチャーを付けるのに対しこちらはほとんど全てロアーあること、その他に葉や花の形質などに差異があるようです。

栽培環境について

この種が自生する地質はN. villosaやN. rajah、N. burbidgeaeなどのボルネオ高山系大型種と同じく超苦鉄質岩(ultramafic rocks)ということなので、水苔よりも鹿沼土や軽石など砂利系を好むと考えられますが、この辺りは育てながら様子を見ていきたいです。

余談ですが、超苦鉄質岩地帯に生える大型種はボルネオ島、パラワン島、シブヤン島などマレーシア~フィリピンに至る島々に点在しており、太古のネペンテスの祖先や地殻変動(プレートテクトニクス的な)にも関わりそうなテーマなので個人的にとてもロマンを感じます。

話は逸れましたが、とりあえずは入手時のまま鹿沼細粒~小粒で環境に慣れてもらいます。

典型的な自生地は開けた荒野や斜面に直射日光、吹きさらしで生えているようなので、日照を強めに風通し良く管理していきます。

標高は高地性としてはそれほど高くないですので、比較的暑さに耐性があるのではと見ています。わが家の中間地~低地性寄りの環境でも順調に育ってくれることを祈りたいところです。

BEのバリエーション

執筆より過去にBEからリリースされたのはBE-3651とBE-4013があります。

2015年から導入されているBE-3651は組織培養(TC)で、非常に数多くのクローンからランダムで発送されるようです。

この個体は2020年4月に初めて導入されたBE-4013で、こちらは1つ1つが異なる実生個体となり、既に完売したとされています。

BEの説明によればBE-3651と同じgrexの種子由来ということで、似たような見た目のバリエーションとなると思われますが、過去のBE-3651と比べるとなんとなく少し違う系統のような気がしないでもありません。この辺は育ててみないとなんともですが、仮に新たに交配が行われていたとすれば自分は歓迎です。

BE-3651には、リップまで黒っぽくなる濃茶の個体、N. peltataに似た特徴的な個体、細長い個体など様々なバリエーションが見られますが、BE-4013の方は(断定するには少なすぎるサンプルしか見ていないですが)それよりもバリエーションが小さい気がします。

わが家の個体

そしてわが家のBE-4013です。

N. palawanensis BE-4013 seed grown (Borneo Exotics)


葉がとにかく特徴的で、丸みを帯びた幅広の葉を付けています。上面から見ると少し黒ずんだような色合いをしています。

例えばシブヤンエンシスなどと似たように、長く伸ばした蔓の先にピッチャーを接地させながら付けるようです。

under side of leaves reveals reddish color so as to N. peltata ('Red Phantom')


葉の裏面をみると、まるでペルタタのように赤みを帯びた葉をしています。自生地の写真にこのような個体があまり見当たらないように思え、とてもユニークに感じます。

このN. palawanensisはStewart氏の報告にあるものと違った特徴を示しているように見え、その由来が気になるところです。

とはいえ、誤品との判断や交雑の可能性などをしてしまうのは、まだ時期尚早かなと思います。インターネット上に見つかるN. palawanensisとされる写真には、いくつかの個体差があるようですしね。

Exotica Plants (EP)のN. palawanensisとも似ているような(?)。

longitudinal veins on leaves


葉を光に透かすと、縦に走る葉脈が数本見られます。これもこの個体の特徴的な点かなと思います。

例えばN. burbidgeaeなどにもこのような縦脈は見られますよね。

透かして見ても、葉の赤みを帯びた色合いは特徴的だなと思います。


still small pitchers...


まだまだ巨大さとは程遠いサイズのピッチャーです。

今の段階のピッチャーは、襟が最初黄色っぽく、時がたつにつれ茶色に変化していきます。側面には濃色のまだら模様が見えます。まだピッチャー表面に毛は確認できません。

株が成熟してきたら襟にはストライプが入ったりするのでしょうか。個人的にはこのツートン的な色味も渋くて好きですね。

この個体がいったい何者なのかは大きく育ててみないと少し不安な点もありますが、同時に楽しみでもあります。今後も折を見て栽培記録を付けていけたらと思います。

【追記】次の栽培記録の記事を書きました!

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