Nepenthes platychila x lowii CK

By b.myhoney - 11月 23, 2021

昨日の雨を境にして、気温がいっそう下がりいよいよ冬という空気を感じられる季節になりました。

わが家の植物の分布はほとんど中間地性的な種が多いので、そろそろ本格的な加温が必要な頃ですね。もっとも、私のような人間にとってはとっくに重ね着と加温が必要な時期で、それにも関わらず体調崩してたりするので、植物の環境適応能力には感服するのみです…。

わが家のネペンテスは原種(か同じ原種同士の交配)が多いのですが、今日は珍しく交配種です。ホムセンネペンを除けば初の登場?かな。

ドイツの大御所、Christian Klein氏のナーセリーから来た実生株になります。

N. platychila x lowii seed grown (Christian Klein)


実生なので個体差がそれなりにあると思いますが、ロアーの現時点ではN. platychila似のピッチャー形態をしてます。

ただ、発色や襟の濃色ストライプなどにところどころN. lowii(ローウィアイ)の雰囲気が感じられます。葉の形状や硬さもN. lowii譲りかなーと思います。

Nepenthes platychilaについて

N. lowiiは今さら説明する迄もないほど知られている人気種ですが、それに比べればN. platychilaはユニークさの割にはそれほど有名とは言えず、今回文献をベースに調べてみたことを備忘のため纏めます。

Nepenthes platychila(ニペンティーズ・プラティカイラが英語圏の発音に近い)はボルネオ島中央サラワクのホーズ山脈(Hose Mountains)の900 - 1400 mに自生する固有種で、2001年12月の同山脈探訪時に当時Malesiana TropicalsのCh'ien C. Lee氏により発見された比較的新しい種です。

緩やかな括りとしてはN. boschiana, N. chaniana, N. epiphytica, N. eymae, N. faizaliana, N. fusca, N. klossii, N. maxima, N. stenophylla, N. vogeliiなどと共にN. maxima複合体(DanserのRegiaeグループ)に纏められています。

近縁種としてはN. fuscaが挙げられ、ロアーピッチャーはN. fuscaに似た形状をしています。しかし本種が最も特徴的なのはアッパーピッチャーで、襟がシャンプーハットのように平らに広がっていて幅広く、殆どのネペンテスに見られる襟の溝がなく滑らかというかなり独創的なものです。


lower and upper pitcher of N. platychila @Carnivero

自生環境は苔の森に着生的に生えるか、斜面の砂岩に地生的に生えているとのことで、N. fuscaと同じく典型的な根の通気を好むタイプだと思われます。

N. lowiiも着生するので、通気性を意識した用土環境で植えるのが間違いなさそうですかね。

発表段階では自生地でロゼットやロアーピッチャーが見られなかった事から、かなり早い段階で徒長するのではとの記述がありました。(N. lowiiも成熟すると一気に伸びるみたいなので、ちょっと怖いですね…。スペース的な意味で)

そこそこの高温耐性に加えて乾燥耐性もありそうで、わが家のような屋外栽培に適した原種と言えそうな気がします。

わが家の個体

そんなN. platychilaと、みんな大好きN. lowiiを交配させたもの。まずは全体像から。


現在4号鉢サイズですが、何やら早くもすくすくと育ちそうな気配を見せています。

葉のサイズに比べてずいぶん大きめなピッチャーを2つぶら下げてます。このへんも着生種らしい特性がそうさせるのですかね?


葉の先端が幅広く三角形のような形になるのはN. lowiiっぽい気がします。N. lowii育てたことないので写真でのみの判断ですが。

…これ、どうみても生育旺盛ですよね。将来の収納のことは今は考えないことにします(笑)


襟のダークなストライプが際立つ、夕暮れの時間帯に撮った一枚。いわゆるマジックアワーというやつですね。水分を絞っていて、蓋が少し萎れています。

どうやら私は襟のストライプやグラデーションに目がないらしく、N. veitchiiの華やかなものとは一味違うN. lowii譲りのダークな色合いに一目惚れしてしまったのでした。


上の写真から少し時間が経ち、気温も下がったこともあって紅葉のように赤っぽく色づき始めたピッチャーと葉。

 この発色が、アッパーピッチャーで残るのかどうかも印象を左右する大きなポイントになりそうです。N. lowiiの色って普通はアッパーで退色するような気がするので。


肉厚な襟がいかにも今後の襟の変形を物語っているようでわくわくしますね。

襟がかなり主張するN. platychilaと襟をほとんど消失している大口のN. lowii、これらの交配がどのようなアッパーピッチャーを生むのか。頑張ってそこまで育てたいと思います。

 

参考文献:Nepenthes platychila (Nepenthaceae), a New Species of Pitcher Plant from Sarawak, Borneo [Ch'ien C. Lee, 2002].

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